本年度行った研究にて、申請者は以下の知見を得た。 (1)小児急性リンパ性白血病および成人T細胞白血病におけるインスリン様成長因子2のゲノム刷り込み喪失(LOI)の検討。 小児急性リンパ性白血病および成人T細胞白血病患者検体、成人T細胞白血病細胞株における、インスリン様成長因子2(IGF2)の刷り込み状態を解析した。小児急性リンパ性白血病患者7名中1名(14%)、成人T細胞白血病患者11名中7名(64%)でLOIを認めた。成人T細胞白血病患者を病期別に解析すると慢性期では4名中3名(75%)で、急性期では7名中4名(57%)でLOIを認めた。成人T細胞白血病細胞株の解析では2株中2株(100%)でLOIを認めた。 (2)小児および成人急性リンパ性白血病(ALL)における各種癌抑制遺伝子プロモーターのメチル化の相違の検討。 小児ALL10例および、成人ALL9例を対象に、10遺伝子について、methylation-specific PCR法を用いて、DNAメチル化パターンを解析した。P15、p16、RARβ、FHIT遺伝子は両者でメチル化が認められたが、p14、Rb、MLH1、DAPK遺伝子は全くメチル化していなかった。一方、APCとRIZ遺伝子は成人ALLでのみメチル化していた。RARβ遺伝子のメチル化は小児ALLより成人ALLで有意に高頻度であった(p=0.01)。メチル化している遺伝子数は小児ALLより成人ALLが多かった(p=0.01)。以上の結果より、小児ALLと成人ALLは発症機序が異なっていると考えられた。
|