1.赤芽球系分化におけるBCL6の役割:マウス赤芽球においては、好塩基性赤芽球(TER119^<high>CD71^<high>)においてBCL6 mRNAが強く発現しており、BCL6欠損マウス新生仔においては、脾臓中の好塩基性赤芽球数と網状赤血球数が優位に減少していたことから、赤芽球の細胞分裂が盛んな好塩基性赤芽球段階においてBCL6が必要であることを示した。また、赤芽球においては、ABCG-2が強発現していることを見出した。今後、BCL6がABCG-2の発現を制御している可能性について研究を進めていく予定である。 2.体細胞突然変異におけるADAR1の役割とBCL6による制御:BCL6欠損マウス由来のIgG1陽性B細胞の体細胞突然変異の頻度は、野生型マウスと比べて亢進し、BCL6欠損マウス由来B細胞では、アデノシンデアミナーゼ活性を持つRNA修飾酵素ADAR1の発現が亢進していた。更に、ADAR1のプロモーター解析により、ADAR1がBCL6の標的遺伝子のひとつであることが判明した。ADAR1は、胚中心B細胞においてAdenineからGuanineへの体細胞突然変異に関係し、その機能はBCL6により制御されていることが示唆された。 3.c-FosによるTCR・V(D)J再構成の制御c-FosがTCR・V(D)J再構成の制御に係っていることを示した。 4.c-Fos欠損マウス脾臓における造血ニッチの解析:c-Fos欠損マウスは、破骨細胞の欠損により骨大理石病になるため、脾臓において髄外造血を行う。骨髄では、未分化な造血幹細胞は骨芽細胞と接してニッチを形成しているが、脾臓では骨芽細胞は存在しない。また、未分化な造血幹細胞の周囲に巨核球様細胞が多数存在し、これらの細胞が造血幹細胞の維持に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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