研究概要 |
1.t(1;3)転座を有する白血病の責任遺伝子MEL1には未だ不明な点が多い(Mochizuki,2000;Nishikata,2003)。これまでの解析から、MEL1SはCtBPの有無に関わらずHDAC群と相互作用すること、少なくとも一部のHDACはCtBPと相互作用しないことから、MEL1SとHDACの相互作用にはCtBPに替わる新たな因子の関与が示唆され、探索中である。G9Aは転写抑制に関与するメチル化転移酵素で、MEL1が属するPRDMのPRDI-BF1やPRISMとの相互作用が最近報告され、実際にRT-PCR法によりL-G3細胞での発現が確認された。免疫沈降WA法による解析から、MEL1SはG9Aと反応し、CtBP存在下で相互作用はさらに強まったが、CtBP非結合型変異体ASではほとんど反応を認めなかったことから、少なくとも、L-G3細胞での分化誘導阻止に関係する因子ではないことが示唆された。 2.転写因子としての機能を明らかにするため、病態的、構造的、機能的に酷似したEVI1の標的遺伝子GATA-2ISに関するプロモーターアッセイ(Yuasa,2005)を用い、遺伝子産物MEL1SおよびASについて調べた。293TやCOS7、HeLa、CHO細胞の場合、MEL1Sは弱い転写抑制(^〜30%)を示すが、ASではほとんど効果が無かった。L-G3の場合、MEL1Sが強い抑制(^〜80%)を示し、ASでも効果を認めた(^〜45%)。両蛋白質を安定発現させたL-G3細胞でGCSFによる分化誘導が阻止され、これをTSA添加で解除できた(課題番号16590950)ことから、HDAC群のリクルートを介してMEL1SがGATA-2の転写を抑制することがL-G3細胞での分化誘導阻止に関係することが想起されるが、関与する他の因子とその機構については更なる検討が必要である。
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