研究概要 |
1.AML1ゲノム遺伝子変異導入マウスの解析 当該研究ではAML1/Runx1遺伝子の白血病関連ゲノム遺伝子変異がもたらす生物作用を検討する目的で、まず、ホットメポット点変異であるR139Q、R174QそしてR177Q、さらに挿入型変異である1150insについて、それぞれ胚細胞系列に変異を導入した遺伝子改変マウスを作製した。そして、当該年度は多数例のホモ接合マウスの解析によって、これらの変異がいずれもAML1の生物作用を完全に廃絶させるものであることを明らかにした。すなわち、ホモ接合体マウスはまったく出生せず、すべて胎生中期に死亡することを確認した。ただし、詳細に検討したところ、他の変異マウスが単純なAML1欠損ホモ接合マウスと同様に胎生12,5日目ごろに死亡するのに対し、R139Qのホモ接合のみは13.5日目まで生き延びることを見出した。これがR139Q変異体の生物作用のどのような特性を反映しているのかいまのところ明らかではないが、今後、その生化学的特性を再検討してゆきたい。 2.レトロウイルスによる造血器腫瘍発症誘発 他方、ヘテロ接合体マウスを長期観察したがいずれの変異体においても造血器腫瘍発症を確認できなかった。また、生存期間も野生型の同胞と異なるものではなかった。AML1の半量への低下はそれだけでは造血器腫瘍発生を引き起こさず、やはり、ここには協調遺伝子の作用が必要になるものと思われた。 そこでR174Q導入マウスにエコトロピック・レトロウイルスを感染させたところ、高頻度に白血病やリンパ腫などの造血器腫瘍が誘導されることを見出した。現在造血器腫瘍細胞からゲノムDNAを抽出し、プロウイルスゲノムの挿入位置の解析を行っている。今後、ウイルス挿入部近傍のマウスゲノムDNAクローニングと配列解析によってAML1遺伝子変異と協調して造血器腫瘍発生に関わる遺伝子(群)の同定をこころみてゆきたい。
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