研究概要 |
インテクリンからのシグナル伝達を行う蛋白質について、炎症シグナルへの反応にどのように関わっているのかを調べた。 Cas-L/Hef1/Nedd9は、インテグリン下流のアダプター分子p130Casのファミリー蛋白質である。これまでにリンパ球での機能は報告されていたが、好中球での役割し不明であったので解析した。Cas-Lは、好中球において、LPS,TNF,fMLPなどでチロシンリン酸化を受けた。TNF,fMLPによるリン酸化は、細胞接着によって増強した。また、Cas-Lノックアウトマウス由来の好中球は、fMLPによる細胞運動の亢進が認められた。 p130Cas結合分子で、マトリックスメタロプロテアーゼやコラーゲンを転写調節するCIZについても解析を行った。CIZは蛋白質レベルでもコラーゲンのC末端と核内で結合し、この結合が、コラーゲン自身の転写を抑制していることが示唆された。CIZノックアウトマウスに血清移入関節炎を適用したところ、野生型よりも関節炎が軽度であった。炎症細胞浸潤、関節面破壊、破骨細胞活性化を見ても、野生型よりも軽度であった。関節炎部位での種々の遺伝子の発現を調べたところ、CIZノックアウトマウスにおいて、IL-1beta, RANKL, MMP3などサイトカイン、ケモカインタンパク分解酵素などの発現が低下していた。一方で、MMP-13, CXCL-12, CCL-2など炎症性の遺伝子の中でも、同様あるいはさらに誘導されているものもあり、転写因子としてのCIZの転写制御がこの表現型に関わっている可能性が示唆された。
|