MicroRNA(miR)は17-25塩基程度の小さなRNAであって、標的メッセンジャーRNAに結合して蛋白翻訳を調節している。我々は、miR142がMYC遺伝子と結合した悪性リンパ腫症例とmiR125b1が免疫グロブリン重鎖遺伝子(IGH)内に挿入された急性リンパ性白血病症例を見出した。これらの臨床的事実に基づき、miRがリンパ球系腫瘍発生に関与していると考えている。 (1)これまでにmiR142は造血器特異的発現を示すことが明らかにされている。我々はmiR142の前駆体転写物(pri-miR142)が顆粒球系細胞とリンパ球系細胞で異なったスプライシングを受けることを明らかにした。顆粒球系細胞でみられる転写物の全塩基配列をすでに決定したが、現在、リンパ球系細胞で見られる転写物の塩基配列を解読中である。 (2)miR125b1がIGH内に挿入された急性リンパ性白血病細胞において、miR125b1がIGHとともに転写物レベルで発現していることを確認した。また、miR125b1とIGHとが染色体転座を生じている新たな急性リンパ性白血病症例を見出し、miR125b1異常を示す急性リンパ性白血病が複数存在することを明らかにすることができた。 (3)マウスおよびヒトのmiR142、miR125b1を発現ベクターに組み込んだ発現プラスミドを構築した。NIH3T3細胞やヒト末梢血CD34陽性細胞にトランスフェクションし、形質の変化を検討している。
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