転写因子TELが造血細胞の分化・増殖に与える影響についてマウスES細胞の系を用いて検討を行った。 野性型ES細胞からLIFを除去し血液細胞に分化させると、AML1、GATA1、GATA2、CD41などの血液細胞特異的な遺伝子は分化開始5日後頃から発現が認められた。TELはそれらに先駆けて分化開始1〜2日後から発現し、5〜6日後に発現が増強するが、さらに分化したCD71陽性細胞ではTELの発現は急速に低下していた。Chickenβ-actin(CAG)プロモーター下にEGFP-TEL融合蛋白を発現するベクターを作成、ES細胞に遺伝子導入して恒常的にEGFP-TELを発現するES細胞株を樹立し、TELの血液分化に与える影響を詳細に検討した。CAGプロモーター下にTELを発現させたES細胞ではTELめ発現量は野性型ES細胞の約5倍に増加しており、核内に複数の焦点を形成して局在していた。分化開始7日後にcolony assayを行うと、TELを高発現したES細胞では野性型ES細胞と比較してCFU-GEMMおよびBFU-Eの有意な増加が認められた。 FACS解析では、TELを高発現するES細胞は、血液分化に伴い通常では発現が低下するFlk1やc-kitの発現が遷延する傾向が認められた。以上の結果よりマウスES細胞の血液分化系においてTELは細胞の未分化性を維持する働きを有する可能性が示唆された。未分化性維持に関与するTELの標的遺伝子を現在定量的PCR等にて検討中である。また新たに同定したTEL結合蛋白を同時に発現するES細胞を作製し、血液分化における2者の細胞内局在の変化および分化に与える影響を現在検討中である。
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