研究概要 |
急性骨髄性白血病(AML)患者の初発時骨髄87検体と正常人骨髄23検体中におけるmiR-9の発現を調べた。正常人骨髄ではmiR-9はほとんど発現が見られなかったが、AML骨髄では約15%の症例でmiR-9の高発現が見られた。そこで、正常人骨髄で見られるレベルをカットオフ値として、miR-9陽性・陰性の2群に分けたところ、16例(18%)が陽性、71例(82%)が陰性となった。これら2群についてその臨床的特徴を解析したところ、AML予後不良を示すパラメーターに有意な差は見られなかった。また寛解導入率にも差を認めなかった。しかし全生存率を解析したところ、平均生存日数はmiR-9陰性群が2091日に対して、miR-9陽性群では1052日であった(Log-Rank検定P値=0.0472)。よってmiR-9陽性患者は明らかに生存率が悪いことが判明した。また完全寛解後の再発率を解析したところ、平均完全寛解持続日数はmiR-9陰性群が2017日なのに対して、miR-9陽性群では769日であった(Log-Rank検定P値=0.0091)。よってmiR-9陽性群では再発が早いことが判明した。これらのことからmiR-9の高発現はAMLの予後不良をもたらす因子であることが判明した。miR-9の高発現が予後不良をもたらす原因を探索する目的で、マウス造血幹細胞におけるmiR-9の高発現による遺伝子発現の変化をマイクロアレイを用いて解析した。cadherin-2, Cadm2, IL-1b receptor, Srpk3やWnk3などがmiR-9の高発現により影響を受ける遺伝子であることが判明した。これらの遺伝子の発現量が白血病検体でどのように変化しているかを今後も解析していく予定である。
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