研究概要 |
HLA半合致(GVH方向2-3抗原不適合)ミニ移植の臨床研究に関して、26名の難治性悪性血液疾患患者に対して、我々の施設で行った成績を論文発表することにより,その有用性を世界に示した(Biol Blood Marrow Tr,2006;12:1073)。これらの患者の検討では、1人を除いて全員、移植早期にドナー由来の生着がみられたにもかかわらず、重症GVHDの頻度は20%と低く、一方で高いgraft-versus-leukemia(GVL)効果が得られることが判った。並行して、厚生労働省「小寺班」の班研究で、HLA半合数ミニ移植の臨床研究を進めており、現在、phase Iを終了し、phase IIを進行中である。さらに、フル移植の形で行うHLA半合致移植の研究を進めており、30名の移植患者のdataを示すことによって、GVHD予防を強化することで、T細胞非除去HLA半合致移植が可能であることを証明した(Experimental Hematology,2008:36:1-8)。HLA半合致フル移植では、graft-versus-leukemia効果がさらに高くなり、非寛解期の移植であるにもかかわらず、再発率20.9%と極めて高いGVL効果が得られることが判った。 HLA半合致移植では、前処置の強度を緩めるなど、移植前後の炎症性cytokineの発生を抑制することによって、致死的なGVHDの発症を防げることを、我々は明らかにしてきた。マウスのMHC半合致移植のモデルを用いて、そのmechanismの解明を試みた。B6C3F1(H-2^<b/k>)→BDF1(H-2^<b/d>)の移植の系で、8.5Gyの全身放射線照射(TBI)の前処置を用いると、80%のマウスが、GVHDのため死亡する。一方、4.5GyのTBIで移植すると、ドナー細胞の生着は起こるものの、致死的なGVHDが発症しないことが判った。この両者を比較することによって、前処置の強度がGVHDの重症度に与える影響につき、検討した。secondary lymphoid organである脾臓内のドナー由来T細胞について、細胞数、活性化およびapoptosis,chemokine receptorの発現について解析したが、両者の間に有意差は認められなかった。一方、GVHDのtarget organである肝臓、消化管では、TBI 8.5Gy群で有意にドナーT細胞の浸潤が増加していた。以上のdataは、臓器の炎症の強さが、致死的なGVHDをもたらしたと考えられ(manuscript in preparation)、現在、さらにそのmechanismを追求している。
|