研究概要 |
腫瘍細胞におけるNM23遺伝子の発現亢進や、細胞外に分泌されたNM23蛋白質に着目して、血清を用いた予後診断法を開発した。この血清NM23蛋白質による予後診断法は白血病、悪性リンパ腫および神経芽腫に応用できることを報告してきた。血清NM23蛋白質が予後不良因子となる生物学的基盤を解明するために、細胞外環境におけるNM23蛋白質の生物学的機能を検討した。 目的1:白血病細胞め増殖・生存に対する促進作用のメカニズム解析 成果1:組み替え体NM23の存在下で、急性骨髄性白血病細胞を初代培養し、MAPK, Akt/PI3K, NFKB, STATシグナル伝達系の活性化を検討した。MAPK (P38,ERK, JNK)およびSTAT1,3,5のリン酸化の充進が観察された。一方、p38MAPK阻害剤、MEK阻害剤、およびSTAT3阻害剤はNM23の増殖促進作用を抑制した。MAPKやSTATの活性化が重要な役割を果たしていると考えられた。これら阻害剤の研究は、血清NM23高値症例に対する治療法の開発に役立つかもしれない。 目的2:正常末梢血単球に対するサイトカイン誘導のメカニズム解析 成果2:組み替え体NM23蛋白質は正常末梢血単球を活性化し(増殖促進は認められない)、腫瘍の悪性化に関与する多くのサイトカインを誘導する。誘導されたサイトカインには白血病細胞の増殖を促進する活性を示すものも含まれた。NM23は単球を活性化し、サイトカイン産生を介して間接的に腫瘍細胞の増殖を支持できると推察される。この正常末梢血単球に対する作用は、MAPK (p38,ERK, JNK)およびSTAT1,3,5のリン酸化の亢進を伴わなかった。これらのシグナル伝達の活性化は増殖促進と関連していると推測される。
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