【目的】我々は、May-Hegglin異常に代表される白血球封人体を伴う巨大血小板性血小板減少症の原因遺伝子MYH9を同定し、MYH9異常が引き起こす一連の疾患群としてMYH9異常症を提唱した。本疾患群に特徴的な白血球封入体は、ドミナントネガティブ効果によるミオシン蛋白の異常集積が原因であると考えられているが、封入体が認められない血小板ではハプロ不全が示唆されている。本研究では、異常ミオシンのみを特異的に認識する抗体を作成し、血液細胞における異常ミオシンの発現とその存在様式を解析した。【方法】MYH9 5818delG変異により新たに生じるC末端側の6アミノ酸配列(MAPTKR)に対する抗ペプチド抗体を作成した。市販の抗ミオシン抗体と共に、末梢血塗抹標本における免疫蛍光染色と分画した血液細胞での免疫ブロットを施行した。また、各血液細胞での異常MYH9 mRNAの相対的発現量を解析した。【結果】免疫蛍光染色では、顆粒球以外では封入体形成を示唆する異常ミオシンの集積は認めなかった。さらに、1)好中球では異常ミオシンは封入体にのみ存在し、2)血小板では特に巨大な血小板においてのみび漫性に存在し、3)リンパ球ではび漫性に存在し、4)単球では極細顆粒状に存在した。また、異常ミオシンの発現量は、血小板においては好中球、リンパ球、単球の約1/10に低下していた。異常MYH9 mRNA発現量は、白血球では正常であったが、血小板では正常MYH9mRNAと比較して約70%に低下していた。【結論】異常ミオシン蛋白/mRNAの発現様式は細胞により異なることが判明し、血液細胞によりその制御が異なることが示唆された。
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