研究概要 |
本研究では同一患者の発作時と非発作時の遺伝子発現を全遺伝子的に比較することにより、喘息発作というイベントにより変化する遺伝子タンパク質群を同定し、疾患パスウェイを構築することを目的とする。小児アトピー性喘息患者を対象としてインフォームドコンセントを得られた患者から発作時(中発作および大発作),非発作時、コントロールの静脈血採血を行い、末梢血から単核球を分離した。単核球からTotal RNAを精製し、蛍光標識したものをIntelli Gene HS Human Expression CHIP、およびIllumina Bead Arrayを用いて解析することにより、発作時、非発作時で変動する遺伝子を同定した。解析にはGene Springを用いた。解析の結果、発作時で発現が有意に変動している26遺伝子を得た。そのうち5つの遺伝子では定量的PCRによりそれらの遺伝子が発作時に有意に変動していることが確認された(Aokiら、論文投稿中)。プロテオーム解析では遺伝子発現解析と同様に発作時と非発作時に採取された静脈血から得られ血漿を使用して蛍光二次元電気泳動法を行った。発作時と非発作時において統計学的に有意な変化(p<0.05)であり、かつ非発作時と比較して発作時1.1倍以上の変化が認められた49スポットを確認した。それらのスポットについて質量分析を行い、39スポット、19タンパク質を同定した。発作時において有意な変動が認められたタンパク質についてELISA法、ネフェロメトリーなどによりさらにサンプルを増やして解析したところ、α1アンチトリプシンおよびcomplement component7が喘息発作時に有意に増加していることを見出した(Nishiokaら、Proteomics Clin Appl,2008)。
|