研究概要 |
流血中において好塩基球は最も少ない細胞であるが、アレルギー疾患においては炎症局所に好塩基球の著しい集簇を認める。そのためには好塩基球の基底膜を通過(transmigration)が重要である。好塩基球の血管内皮通過は広く解析されているがtransmigrationは多くが知られていない。transmigrationモデルとしてマトリゲルを用い各種の遊走因子に対する好塩基球の反応を解析した。意外なことにマトリゲル上段のIL-3存在が好塩基球のtransmigration亢進に重要であった。好塩基球の化学遊走因子である脂質メディエーターやRANTES,IL-8がマトリゲル下段に存在してもtransmigrationの亢進は認め得なかった。しかしながらIL-3が上段に存在することにより好塩基球の、下段化学遊走因子に対するtransmigrationは著しく亢進した。抗体による中和実験により好塩基球に発現するMMP-9とβ2インテグリンがtransmigrationに重要であることが判明した。MMP-9は好塩基球に恒常的に細胞内および細胞表面に発現し、IL-3によりMMP-9の発現は亢進した。MMP-9は癌細胞の転移成立に重要であることはかねてより指摘されている。MMP-9を介する好塩基球のtransmigrationは慢性炎症およびアレルギー反応後発相の特徴的所見であり、その制御が炎症のコントロールに資するものと思われる。
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