日本でのMRSA院内感染の制圧には、日本独自のMRSA感染リスク因子の評価に基づいた先制攻撃的かつ重点的なMRSA感染対策法を確立し、一病院だけでなく周囲の療養施設を含めた地域単位で実施することが必要である。この新しいMRSA感染対策法の確立と実施のためには、(1)病院と周辺の療養施設を含めた地域単位の「MRSAプール」の全体像の把握、(2)地域および日本でのMRSA感染リスクの評価と、(3)病院感染対策の効率の正確な評価が必須である。今回、阪大病院の心臓血管外科関連病棟群、消化器外科関連病棟群、済生会吹田病院の集中治療室関連病棟群の3病棟(診療科)群での全症例のMRSA保菌検査(積極的監視培養 : ASC)とMRSA陽性者の調査により、上記の3点を評価した。加えて、MRSA感染症が発生した場合に重篤化しやすいMRSA感染対策の重点診療科(病棟)におけるASCの有効性も検討した。
|