研究概要 |
A群レンサ球菌をddYマウスに筋注すると、感染の急性期から全てのマウスが回復し、外見上は一旦健康を取り戻すにもかかわらず、約3週間経過してそれ以降に突然死亡し始める。死亡したマウスの全身主要臓器にはA群レンサ球菌が播種し、一部のマウスは、筋注部位からは離れた場所に軟部組織壊死を認める。研究代表者らはこの死を「遅延死delayed death」と命名し、これこそがSTSSの動物モデルであると考えた。 その後の研究で以下のことが明らかとなった。 (1)接種した菌はしばらく感染局所にとどまっているが、感染20日頃より菌血症を起こし始める。 (2)菌血症を起こした菌は、莢膜を強く発現している。 (3)莢膜成分であるヒアルロン酸を合成するhasA遺伝子をノックアウトした菌は、遅延死を起こさない。 (4)死亡直前のマウスの血清中サイトカインを測定すると、i.v.後急性期に死亡したマウスと比較して、TNFα、IFN-γ、IL-10,、IL-12p70が100倍以上の差をもって有意に高値である。 (5)化膿レンサ球菌i.m.後11日経過してLPSをi.v.したところ、72時間以内に8匹中7匹が死亡した。 平成18年度に明らかとなったのは以下の点である。 (1)遅延死マウスにおいて、血清LPSは増加していない。また、ヒアルロン酸も有意に高値とはいえない。さらに、C3H/HeJでも遅延死が生ずることより、TRL4は我々のマウスモデルにおいて死亡との直接の関与は否定的である。 (2)感染後12日目にヒアルロン酸を投与しても遅延死を誘導しない。 (3)高TNF-α血症は、マウスの死亡直前に発生しており、数日前から持続しているわけではない。 (4)TNF-αは、溶連菌の増殖に影響を及ぼさない。 現在、サイトカインにSTSS発症のtriggerとなるものがあるかどうか調ている。
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