本研究の目的は気管支喘息の発症と憎悪におけるウィルス由来2本鎖RNAの病的意義を検討することにあり、マウス喘息モデルを用いて次のような知見を得ていた。 (1)感作過程で微量の2本鎖RNAを投与すると、抗原再曝露後の喘息反応が著明に亢進し、気道におけるIL-13の産生が選択的に亢進していること。 (2)感作過程で2本鎖RNAの作用を増強するアミノ糖を併用すると、やはり喘息反応は亢進するが、IL-13産生亢進ではなくIL-10とIFN-gammaの産生低下がみられるとこと。 助成を受けることにより平成18年度に以下の新知見が得られた。 ・微量の2本鎖RNAによる喘息反応増強の機序 (1)喘息マウス肺から作成した細胞浮遊液をFACS解析することにより、2本鎖RNA投与はCD8T細胞からのIL-13産生を選択的に増強することが明らかした。 (2)IL-13の作用の中和剤を投与すると2本鎖RNAによる喘息反応の増強が見られないこと。 すなわち、微量の2本鎖RNA投与はCD8T細胞からの選択的なIL-13産生増強を介して喘息反応の亢進を引き起こすことを明らかにした。 ・増感剤併用による喘息反応増強の機序 (1)喘息マウス肺から作成した細胞浮遊液を解析することにより、増感剤を併用すると、IL-10産生に関わる調節性T細胞として知られるFoxp3陽性CD25強陽性CD4T細胞の比率が減少すること。 (2)IFN-gamma欠損マウスを用いても増感剤併用によって生じる喘息反応増強は野生型マウスと同様に認められること。 (3)IFN-10受容体に対する中和抗体を投与すると、増感剤併用によって生じる喘息反応増強は認められないこと。 すなわち、増感剤併用で誘導される喘息反応増強は、IFN-gamma産生低下によるのではなく、IL-10の産生低下によるものであり、それには調節性T細胞の講の抑制が関与しているものと考えられる。
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