研究の目的は気管支喘息の発症と増悪におけるウィルス由来2本鎖RNAの病的意義を検討することにあり、マウス喘息モデルを用いて次のような知見を得た。 感作時に微量の2本鎖RNAを投与すると、抗原曝露後の喘息反応が亢進し、気道におけるIL-13産生が選択的に亢進した。2本鎖RNAはCD8T細胞からのIL-13産生を増強し、IL-13中和剤を投与すると2本鎖RNAによる喘息反応の増強が見られなかった。すなわち微量の2本鎖RNAはCD8T細胞からのIL-13産生増強を介して喘息反応の亢進を起こすことを明らかにした。微量の2本鎖RNAによる喘息反応の増強は、肥満細胞欠損マウスでは生じなかったが、野生型マウス骨髄から分化誘導した肥満細胞を欠損マウスに移植すると上記の増強反応が生じた。このことから微量の2本鎖RNAによる喘息反応の増強には肥満細胞が必須である可能性が示された。 感作時に2本鎖RNAの作用を増強するアミノ糖(D-ガラクトサミン)を併用すると、やはり喘息反応は亢進するが、IL-13産生亢進ではなくIL-10とIFN-gammaの産生低下がみられた。IL-10産生に関わるFoxp3陽性の調節性T細胞の比率も滅少しており、IL-10受容体中和抗体を投与すると増感剤併用によって生じる喘息反応増強は認められないが、IFN-gamma欠損マウスを用いても増感剤併用によって生じる喘息反応増強は野生型マウスと同様に認められるた。すなわち増感剤併用で誘導される喘息反応増強は、調節性T細胞の誘導の抑制とIL-10の産生低下が関与しているものと考えられた。 以上の結果から2本鎖RNAは複数の機序を介して喘息の発症を促進するように作用することが示唆された。
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