Th2アジュバントの分子基盤を解明するため、各種候補分子のプロファイリングを検討してきた。その過程において、Th1/Th2アジュバント刺激によってヒト抗原提示細胞(APCs)に特徴的なNotchリガンドの発現パターンが出現することを明らかにした。具体的には、Th1アジュバント刺激によりDelta4遺伝子発現がTh2アジュバント刺激によりDelta1遺伝子発現が、それぞれ誘導された。ヒト単球由来樹状細胞(Mo-DCs)と白血病由来細胞株によるAPCモデル(leukemic APCs)のいずれにおいても同様の結果が認められた。これまでのマウスによる検討では、APCsに発現されるこれら2つのDelta分子は同様にTh1分化誘導に関与するように考えられてきたが、本研究により少なくともヒトにおいては異なる発現挙動とTh1/Th2アジュバント活性との相関を呈することが初めて明らかになった。典型的なTh1アジュバントであるLPSおよびTh2アジュバントであるPGE2等の他に、最近当研究室で同定されたTh1/Th2アジュバント活性を持つ乳酸菌を用いた検討でも、同様の結果が確認された。これにより、多数の環境物質を対象にしたTh1/Th2アジュバントのスクリーニングにおけるヒトleukemic APCsのDelta1/Delta4発現パターン評価の有効性が強く示唆された。今後は、Th1/Th2分化誘導におけるDelta1/Delta4の機能的側面にも焦点を当てる一方、他の免疫関連分子ならびにmicroRNAの発現に関する検討を継続する。
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