関節リウマチ(RA)は、多関節滑膜炎を主病変とする全身性自己免疫疾患であり、関節破壊、傍関節および全身性骨粗鬆症を齎す。RAでは滑膜が異常増殖し新生血管を伴って肉芽腫様となり、滑膜マクロファージが破骨細胞に分化し骨破壊を来たす。しかし、破骨細胞形成に於ける血管内皮細胞の関与については明らかでなく、内皮細胞機能も臓器により異なっている。我々は、RA滑膜由来血管内皮細胞(RAEC)がM-CSFを高度に産生する特徴を持ち、RAECがRA炎症部における破骨細胞の分化、誘導に関与することを以下のように明らかにした。 (1)Gene Chipにおける各種臓器由来血管内皮細胞での発現遺伝子解析により、RAECにおいてのみM-CSFの高発現が認められた。(2)RAEC培養上清中でのみM-CSFが増加していた。(3)RA患者由来滑膜線維芽細胞上のRANKLは強く発現していた。(4)RAECを敷いたtranswell上で末梢血単核球を共培養すると単球の著明な遊走が誘導された。(5)この経血管内皮遊走した単球にRANKLを添加することでTRAP陽性多核細胞形成が誘導された。(6)Transwell chamber上層にRAECを下層に末梢血単核球およびRA線維芽細胞を添加した共培養系において破骨細胞形成が誘導され、M-CSF中和抗体添加により抑制された。 以上の結果より、通常の慢性炎症部では形成されない破骨細胞が、RA滑膜炎症部でのみ形成される機序として、RAでは増殖したRAECからM-CSFが高産生され、破骨細胞前駆細胞である単球を呼び込み、RANKLを発現しているRA滑膜線維芽細胞の支持のもとで、破骨細胞の分化、成熟が齎されるというRAに特徴的な悪循環機構の存在が明らかとなった。
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