研究概要 |
膠原病に於いては、MDR-1の転写やP-糖蛋白質に注目した既報はなく、申請者らは健常人とSLEおよびRA患者のリンパ球を用いて、P-糖蛋白質の発現を検討した。その結果、健常人のCD4,CD8,CD19陽性リンパ球では、P-糖蛋白質の発現は全く認められないのに対して、SLEおよびRA患者のリンパ球では、一部の症例でP-糖蛋白質の発現が顕著に認められるとの成績を得た。さらに、P-糖蛋白質陽性の症例を解析したところ、長期間に亙って抗リウマチ薬やステロイド薬などの治療を受けてきた症例、ならびに、未治療であるが疾患活動性が極めて高い症例に於いて、P-糖蛋白質の発現が高いとの予備的成績が得られた。即ち、薬剤抵抗性は、従来から報告されてきた長期間の薬剤投与により齎される薬剤耐性(二次無効、エスケープ現象)以外に、疾患活動性が高いために薬剤に反応しない薬剤不応性に大別される可能性が示唆された。 特に、リンパ球のP-糖蛋白質陽性で、疾患活動性の高いSLE症例に於いては、既存の治療に対しては不応性であり、ステロイドパルス療法や免疫抑制薬による強化療法を要し、その結果、疾患活動性の改善に伴い、P-糖蛋白質の発現が減弱し、既存の治療効果が回復するに至るとの予備的成績を得た。その機序として、研究分担者の河野との共同研究により、疾患活動性の高いSLE症例のリンパ球では、サイトカイン刺激によって、MDR-1の転写やP-糖蛋白質の発現が誘導されるとの予備的成績を得、今後、これらの機構の解明が進むものと期待できる。
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