研究課題
我々は本プロジェクトにおいてIL-27のウイルス感染に対する新しい防御機構を見出した。脳心筋炎ウイルス(EMCV)を感染させたC57BL/6マウスにIL-27遺伝子をin vivo導入し、その後のマウスの生存を観察したところ、遺伝子非導入群は感染後10日以内に全例死亡したのに対して,IL-27遺伝子を投与したマウスは100%が生き延びた。この抗ウイルス効果の機序についてin vitroの感染実験を行なって検討を加えた。その結果、IL-27は、獲得免疫機構を介するのではなく、ウイルス感染した心筋細胞に直接作用することによってウイルス複製を抑制することが分かった。そこで、研究代表者らは、IL-27による抗ウイルス機構が、MDA5および/またはRIG-Iを介している可能性を検討した。胎生16日目のマウスより心筋細胞の初代培養を樹立し、IL-27で刺激したところ、MDA5とRIG-Iの両方が、メッセージレベルで著明に亢進した。さらに、IL-27処理された細胞は、無処理の細胞と比較して、感染直後から多量のIFN-βを産生することが観察された。これらの結果から、IL-27シグナルが心筋細胞内に入力されると、MDA5とRIG-Iの発現が亢進し、ウイルス感染によって惹起されるMDA5パスウェイの活性化が増強され、その結果、感染初期からの強力なインターフェロン産生の誘導と、ウイルス複製の抑制がもたらされたことが示唆された。
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