紫外線、放射線、過酸化水素など細胞外ストレスによるアポトーシス誘導には、酸性スフィンゴミエリナーゼの活性化を通じた、スフィンゴミエリン分解によるシグナル伝達物質セラミドの産生が関与している。レドックス制御と酸性スフィンゴミエリナーゼ活性化機構、および小児病態におけるスフィンゴミエリン・セラミドサイクルの役割について検討した。 酸性スフィンゴミエリナーゼ活性化機構に関しては、C末端システイン残基が酸化/還元システイン・スイッチとなって活性化を引き起こすことを分子レベルで証明した。すなわち、酸性スフィンゴミエリナーゼcDNAを用いて、C末端システイン残基をアラニン残基に改変した蛋白を発現し解析したところ、蛋白局在がライソゾームから細胞膜へ変化し、また、細胞外液中の酵素活性が上昇し、蛋白が細胞外へ分泌されていた。ストレス刺激によりC末端システイン残基の変化により蛋白は活性化を受け、細胞膜に存在するスフィンゴミエリンを分解、シグナル伝達物質セラミドの産生していることを示した。次に、酸性スフィンゴミエリナーゼ活性抑制薬として抗精神病薬クロルプロマジンが、培養細胞に対し90%以上の活性抑制作用を持つことを示し、細胞内蛋白の分解促進が活性抑制機構であることを示した。 小児病態の一つである新生児低酸素性脳症では、フリー・ラジカルや活性酸素種(ROS)が組織障害を引き起こす。ラットを用い、抗酸化作用を有するビタミンCの脳室内投与が、低酸素性脳症の組織障害の程度を軽くすることを示した。次に、低酸素性脳症モデル・ラットに酸性スフィンゴミエリナーゼ抑制剤クロルプロマジンを投与したが、組織障害の有意の差は認めず、投与量などに関して検討を加えている。
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