細胞外ストレスに対する細胞応答における酸性スフィンゴミエリナーゼ活性化機構に関しては、C末端システイン残基が酸化/還元システイン・スイッチとなって活性化を引き起こすことを分子レベルで示した。種々の小児病態における治療法や薬剤の開発における分子標的になりうることを示した。小児病態の一つである新生児低酸素性脳症では、フリー・ラジカルや活性酸素種(ROS)が組織障害を引き起こすが、ラットを用い、抗酸化作用を有するビタミンCの脳室内投与が、低酸素性脳症の組織障害の程度を軽くすることを示した。したがってスフィンゴミエリン・セラミドサイクルの調節を介した組織障害軽減の治療法の可能性を示した。しかし、酸性スフィンゴミエリナーゼ活性抑制剤クロルプロマジンのマウスでの明らかな効果は示されなかった。 スフィンゴミエリン・セラミドサイクルが病態に関与するニーマンピック病の分子病態解明のため臨床型多様性を遺伝子レベルで解明した。また、スフィンゴミエリンと密接に関与する細胞内コレステロール輸送との関係を細胞レベルで示し、今後への展開方向を示した。 原因不明の疾患で、細胞内シグナル伝達異常が想定されていたCostello症候群の病態・病因の解明を試みた。トロポエラスチン遺伝子発現の著明な低下が証明されたが、二次的に細胞レベルで種サイトカインの過剰産生が引き起こされていることを示した。
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