モルモットの中枢神経組織から髄鞘塩基性蛋白を抽出し、雌のルイスラットに完全フロイントアジュバントと共に感作し、実験的自己免性脳脊髄炎を誘導した。これにより一過性で寛解型の脳脊髄炎の動物実験モデル(ラット)を作成することができた。また、ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白の脳炎起炎性分子であるリコンビナントミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白あるいはミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白35-55ペプチドを作成し、雌のNODマウスあるいは雌のC57B/6マウスに完全フロイントアジュバントと共に感作した。これらの手技によりNODマウスには再発寛解型の脳脊髄炎、C57B/6マウスには慢性進行性の脳脊髄炎の動物実験モデル(マウス)を作製することができた。マウスの脳脊髄炎の発症には個体差があり、NODマウスにおいて再発寛解を繰り返す個体は10匹中3〜4匹であり、C57B/6マウスにおいて慢性進行性の脳脊髄炎は10匹中4〜5匹であった。残りのマウスは脳脊髄炎を発症しない個体あるいは一過性で寛解型の脳脊髄炎のパターンをとる個体であった。さらに、雄のルイスラット、C57B/6マウス、NODマウスから採取した骨髄の病理組織標本を作製し、Y染色体プローブを用いて、病理組織標本上で骨髄細胞を確認できることを観察し、また、これらの動物の大腿骨から骨髄細胞を採取できることを確認した。来年度は雌のマウスあるいはラットに作製した脳脊髄炎の動物実験モデルに対して、同系統の雄の大腿骨から採取した骨髄細胞を脳脊髄炎の発症前後に静脈内あるいは脳内に直接移植を行って、脳脊髄炎による運動麻痺に対する臨床的改善の有無や病理組織の変化を観察する予定である。
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