研究概要 |
原因不明の低身長児,特に胎内発育遅延(IUGR)に伴う低身長児,を対象にインスリン様成長因子(IGF)受容体I型(IGF-IR)の遺伝子解析を行い,IGF-IRの異常に起因する成長障害を検討した.その結果新規のIGF-IR遺伝子異常を見出した. (1)症例報告 IUGRで出生した4歳女児にIGF-IRのα鎖に,Arg431Leuをヘテロで認めた。IUGR性低身長を示す母親にも同じ変異をヘテロで認めた。本症例はIUGRに伴う低身長として成長ホルモン(GH)治療は受けたが,GH投与による血中1GF-Iの上昇は認めるも身長の改善は認められなかった. (2)本変異沼IGF-IR遺伝子をR-細胞に導入し、以下の結果を得た。 (1)IGF-I投与に伴う細胞増殖能は、野生型に比較して変異導入R-細胞の増殖は不良であり、IGF-IRの機能異常が示唆された。 (2)[^<125>I]-IGF-I結合実験では,導入R-細胞上のIGF-Iの結合部位(IGF-IR)は、野生型と同等の結合部位と結合親和性を示した。 (3)IGF-IRのβ鎖のIGF-I添加に伴う自己リン酸化は変異導入R-細胞の方が野生型よりも高度のリン酸化を呈した。 (4)しかし、IRS-2のIGF-I添加に伴う自己リン酸化は変異導入R-細胞の方が野生型よりも明かな低値を示した。 (5)[^<125>I]-IGF-Iを加えて[^<125>I]-IGF-Iと結合したIGF-IRのinternalizationを調べたところ、変異導入R-細胞の方がinternalizationの程度が低い結果を得た。 以上より、本症例ではIGF-Iと結合した変異1GF-IRのinternalizationの不良により、IGF-IRの機能不全を来したことが明らかとなり、この結果,IUGR性低身長を来したことが示唆された。
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