研究課題
基盤研究(C)
精神遅滞の発症機構の解明を通じて診断・治療法の開発基盤を形成することを目的に、1)精神遅滞原因遺伝子motopsin(prss12)の欠損マウスの表現形について解析を行い、2)motopsinとの相互作用が示唆されているseizure related protein6(SEZ6)について解析を行った。Motopsin欠損マウスの空間学習能については、野生型マウスと比べて弱いながらも有意な低下が認められた。同種他個体の認識能を測定する社会学習テストでは、motopsin欠損マウスは刺激動物に対してより長時間興味を示した。こうした学習・社会行動に重要でありmotopsinが発現している海馬CA1ニューロンでの興奮性シナプス密度が低下していた。SEZ6ついては組換え蛋白質を抗原として抗体を作製し解析を行った。両者をニューロブラストーマ細胞株に共発現させると、細胞内顆粒内に共局在しており、免疫沈降法によって両者の結合が確認された。免疫染色からSEZ6蛋白質はmotopsinが発現している海馬CA1領域や大脳皮質、嗅球の他、線条体や外側扁桃体などのニューロンの細胞体に局在していることが明らかになった。特にmotopsinが強発現している生後7日の大脳皮質や生後10前後の海馬ニューロン上で相互作用が示唆された。同様のSEZ6蛋白質の局在はヒト大脳および脊髄前角のニューロンでも認められた。以上のことから、motopsinはニューロンから分泌された後、SEZ6などのニューロン細胞膜上に存在する蛋白質にアンカーした状態で機能しており、その機能不全は海馬の機能障害を引き起こすことで精神遅滞に特徴的な学習異常や社会行動の異常を誘発する可能性が明らかになった。
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