研究概要 |
【目的】熱性けいれんの病態にはサイトカインが関与することが想定されている。熱性けいれん発症における炎症性サイトカインの関与を明らかにするために、患者・対照の主要な炎症性サイトカイン遺伝子多型を網羅的に調べた。 【対象と方法】4遺伝子の5多型(IL6-572C/T, IL8-251A/T, TNFA-1037C/T, ILIO-1082A/G, -592A/C)について、熱性けいれん患者249名(単純型孤発例118名、単純型家族例68名、複雑型63名)と健常対照225名について、TaqMan SNP Genotyping Assayを用いて遺伝子型を決定し、カイ二乗検定で関連解析を行った。関連を認めたIL10について、温熱誘発性けいれんモデルを用いてその作用を解析した。本研究は九州大学(No.87)ならびに愛媛大学(No.TE-17-2)倫理委員会の承認を得ている。 【結果】IL10-592CアレルおよびIL10 -1082A -592Cハプロタイプの頻度が熱性けいれん患者で有意に低かった(それぞれp=0.013,p=0.014)。日齢20-24のラットを用いた温熱誘発性けいれんモデルにおいて、IL-10(500ng/body)の経鼻投与によりけいれん閾値温度が有意に上昇した(p=0.027)。 【考察】IL10遺伝子プロモーターA-Cハプロタイプはプロモーター活性が高いとされ、様々な疾患で有意な相関が報告されている。A-Cハプロタイプが熱性けいれん患者で有意に少ないことから、熱性けいれん感受性を減弱することが示唆された。IL-10の中枢神経に対する作用は十分に知られていないが、けいれん閾値を上げる可能性がある。
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