研究概要 |
【目的】熱性けいれんの発症には遺伝的要因が関与することは以前からよく知られている。日常診療で通常遭遇する小家系や孤発性の熱性けいれんは、多因子性の遺伝様式をとると考えられている。この研究では、候補遺伝子が熱性けいれん感受性に関与するか、熱性けいれん患者-対照間で遺伝子関連解析を行った。 【対象と方法】熱性けいれん患者249名(単純型孤発例118名、単純型家族例68名、複雑型63名)と健常対照225名について、免疫反応(IL1B)、内在性カンナビノイドシグナル(CNR1)、酸-塩基バランス(SLC 4A3, SLC9A1, SLC9A3)、ギャップジャンクションチャネル(CX43)、ならびにGABAA受容体蛋白輸送(PRIP1)に関わる遺伝子の多型を解析した。本研究は九州大学遺伝子解析倫理委員会の承認を得ている(No.136)。 【結果】全熱性けいれん患者、単純型、複雑型熱性けいれん患者と対照の間に有意な多型頻度の違いはなかった。次に、単純型熱性けいれんを家族歴の有無で二群に分けて解析を行ったところ、IL1B-592多型と孤発性単純型熱性けいれんとの間に有意な違いを認めた(p=0.003)。 【考察】これまでの研究と併せて考えると、サイトカイン遺伝子は単純型熱性けいれんの罹患性において促進または抑制因子として働く可能性がある。遺伝子関連解析は、少なくとも熱性けいれんのあるサブグループの分子基盤を理解するのに、有効な手段と考えられる。
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