研究概要 |
気管支喘息発作増悪時にはライノウイルスなどのウイルス感染症が関与している。これらのウイルスは生体とは、気道上皮細胞において最初に接触する。気道上皮細胞のウイルス感染に対する反応がその後の気道炎症に規定するものと考えられ、特に乳児期におけるRSウイルス感染の場合は、気管支喘息発症に関与しているかもしれない。そこで我々は、培養気道上皮細胞を用いたウイルス感染モデルを作成し、気道上皮細胞における、各種メディエーターの産生、細胞表面蛋白の発現、シグナル伝達系の検討を行った。 ウイルスが感染のモデルとして二本鎖RNA (dsRNA)を使用した気道上皮細胞は、好中球性炎症を惹起するIL-8に加え、RANTESを産生した。IFN-betaはRANTES産生を濃度依存性に誘導することから、dsRNAによるRANTES産生は少なくとも一部、dsRNAで刺激された気道上皮細胞より産生誘導されたIFN-betaによると考えられた。 dsRNAは好酸球性炎症を惹起するeotaxinは誘導しないが、Th2サイトカインであるIL-4,1レ13はこれを誘導した。dsRNAで全処置した気道上皮細胞をIL-4で刺激すると、dsRNAの濃度依存性にeotaxinの産生が増強した。この機序にはIL-4受容体発現が関与していた。dsRNAはIL-4受容体のコンポーネントのひとつIL-4R-alpha鎖の発現を遺伝子レベルで増強し、蛋白の発現も増強させた。これによりIL-4受容体からの細胞内シグナル伝達系のひとつSTAT6のリン酸化が増強され、結果としてeotaxinの産生が増強された。 このように、ウイルス気道感染症では、好中球性炎症だけではなく好酸球性炎症も同時に惹起される可能性があることがわかり、ウイルス感染症による気管支喘息発作増悪の機序として説明ができると考えられた。
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