気道ウイルス感染症の気管支喘息発作増悪に対する作用を検討するために我々は、気道上皮細胞への気道ウイルス感染症モデルを作成した。dsRNAであるpoly(IC)を気道上皮細胞にtransfectionにより導入するというものである。このモデルはtransfectionにより、実際のウイルス感染症でも認められるような種々のメディエーターを産生し、モデルとして使用できることを確認した。Th2cytokineであるIL-4はこのモデルにおいてCCL-26産生を誘導した。Th1 cytokine IFN-gammaはIL-4と同時に存在するとこれを抑制した。しかしながらIFN-gammaを前処置した細胞において、IL-4により誘導されるeotaxin-3産生は逆に増強された。これにはIL-4受容体の発現増強が関与していた。すなわち、IFN-gammaはIL-4R-alpha鎖およびIL-2R-gamma鎖の遺伝子発現および、蛋白発現を増強した。これによりIL-4のシグナルは気道上皮細胞に強く入り、結果としてCCL-26の産生が増強されることがわかった。IFN-gammaは気道ウイルス感染症時に気道に浸潤したリンパ球から産生されると考えられる。このことから、気道ウイルス感染症時にはIL-4受容体発現増強を通じてCCL-26産生が増強し、気道の好酸球性炎症の増強、すなわち気管支喘息発作が増強するものと考えられる。また、同様な機序で、気道上皮細胞においてはロイコトリエン受容体CysLT1の発現増強も生じることを見出した。ロイコトリエンLTD4は気管支喘息の病態における重要なメディエーターであるが、同時に気道ウイルス感染症でも重要な働きをしている。気道上皮細胞においてLTD4はIL-4により誘導されるCCL26産生を増強させることから、この経路によってもウイルス感染症時に気道好酸球性炎症が増強すると考えられる。
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