川崎病では、遠隔期にも血管内皮障害が残存し早発動脈硬化の危険因子となりうることから、血管障害の修復過程における血管内皮前駆細胞(EPC)の内皮再生に大きな期待が寄せられている。本研究では、EPCの動態と生物学的意義を検討することを目的に川崎病類似血管炎モデルを作成して以下の検討を行った。【対象と方法】実験には離乳期日本白色系家兎を用い、すでに報告した方法により馬血清を静脈内投与してモデルを作成した。ついで、(1)急性期から回復期に見られる血管内皮障害に関してHE染色、EVG染色、CD31免疫染色により、病理学的評価を行った。ついで、(2)血中のEPC数の測定をより少量の検体で、短時間で測定できるよう、FACSを用いた迅速測定法の確立を試みた。川崎病患者の末梢血を検体とし、表面マーカーCD34とAC133を用いてFACS解析を行った。(3)血管炎早期から回復期における末梢血中EPCの変動を検討した。【結果】(1)モデル動物の冠動脈では3〜5日後をピークとする全層にわたる激しい汎血管炎をみ、内膜の炎症性・増殖性変化は回復期以降も残存した。発症3日からCD31陽性のEPC類似細胞が内皮および内皮下組織への出現し、回復期においても残存した。(2)FACSで測定した末梢血内EPC数は、急性期に明らかに増加(他の有熱性疾患の約2.6〜4倍)し、回復期でも高値が持続した。この結果は再現性をもって認められ、FACSを用いた方法は小動物を対象とする本研究において信頼のおけるEPC数測定法であると考えられた。(3)個体差が見られるもののEPC数は急性期早期から3〜5日をピークとして増加し、回復期にかけても高値を維持した。このEPC変動は内膜層でのEPC様細胞出現頻度の推移と相関していた。
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