研究概要 |
遺伝性神経変性疾患のひとつであるGM2-ガングリオシドーシス(β-ガラクトシダーゼ欠損症)のモデルマウス(β-ガラクトシダーゼ・ノックアウトマウス)を用いて、細胞移植による治療研究を行った。ヒトβ-ガラクトシダーゼを高発現するトランスジェニックマウスから次の3とおりの移植用細胞を調整した。(1)成マウスの大腿骨より骨髄細胞を採取・培養して浮遊細胞を除き、培養面に付着増殖するものについて継代培養を続け、安定して分裂増殖する間葉系幹細胞株、(2)胎生12〜13日の胎仔の大脳より得た胎生期脳細胞(この胎生期脳細胞は凍結保存も可能であり、また、ポリD-リジンをコーティングしたシャーレ上で、Neurobasal/B27培養液に10%に牛胎児血清を加えたものを用いて培養すると、数日で突起を現し神経細胞様の形態をなす)、および(3)(1)と (2)の混合細胞である。これらを生後1日齢のβ-ガラクトシダーゼ・ノックアウトマウスの脳室内にそれぞれ移植し、移植細胞の生着期間とGM2-ガングリオシドの蓄積を抑制する治療効果を見た。移植後2,4,8,12,24,32週の各々の時点で、(1)、(2)、(3)各群を生着細胞数、生着期間、およびGM2-ガングリオシド蓄積に対する効果について比較検討した。生着細胞数および生着期間は、X-Gal染色にてヒトβ-ガラクトシダーゼ強発現の細胞の量により判断した。(1)の細胞を移植したマウスでは、移植後32週においてもヒトβ-ガラクトシダーゼ強発現細胞を認めたが、(2)、(3)の細胞を移植したマウスでは、移植後12週ですでにヒトβ-ガラクトシダーゼ強発現細胞はかなり減少しており、有意差があった。GM2-ガングリオシド蓄積は、生着細胞の生着期間に依存して減少が認められた。
|