今年度の研究計画に基づき、Hand^<Hand1/Hand1>マウス胎仔(Hand2をHandlで置換したホモ接合マウス胎仔)、Hand2^Hand1/-マウス(Hand2をHand1でヘテロ置換したマウス)を解析した。1.Hand2^<Hand1/->マウス胎仔の心表現型Hand2^<Hand1/+>マウス(Hand2をHand1で置換したヘテロ接合マウス)と、Hand^<2+/->-マウス(Hand2ヘテロ欠失マウス)を交配させて得られたHand2^<Hand1>マウスは、胎生9.5日頃から右心室の著明な低形成が認められ、胎生10.5日に成長障害をきたし死亡した。この表現型はHand2-/-マウス(Hand2ホモ欠失マウス)と同等であった。昨年度行ったHand2^<Hand1/Hand1>マウス胎仔の解析と比較検討した結果、右心室発達においてHand1は遺伝子量依存性にHand2の機能を代償することが考えられた。2.Hand2^<Hand1/Hand1>マウス胎仔の咽頭弓の表現型Hand2^<Hand1/Hand1>マウス胎仔の咽頭弓は、右心室の低形成が明らかになる胎生12.5日において、その構造は保たれていた。Hand1及びHand2の咽頭弓におけるメッセンジャーRNA(mRNA)レベルの発現を、in situ hybridizationで検討した結果、Hand2の発現はなく、本来咽頭弓中枢に限局するHand1発現が、Hand2発現領域まで拡大しており、咽頭弓においてもHand1によるHand2の置換が正しく行われていることが示された。他の咽頭弓特異的発現遺伝子Fgf8、Fgf10、Msx1、Msx2のmRNA発現も野生型と変化がないことが判明し、咽頭弓発達においては、Hand1はHand2機能を代償すると考えられた。構造の類似したHand1、Hand2は、組織特異的にその遺伝子相補性が異なることが考えられた。
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