研究概要 |
ゴーシェ病は、最も頻度の高いライソゾーム病で、3つの臨床病型:Type1(慢性非神経型),Type2(急性神経型)、Type3(亜急性神経型)に分類される。Type1に対しては、近年、酵素補充療法が画期的な治療効果をあげているが、神経症状を主要症状とするType2、Type3には酵素補充療法は十分な治療効果が得られず、新たな治療戦略の開拓が急務である。ゴーシェ病の責任遺伝子はacid-β-glucosidase(GCase)で、1992年頃より、GCase遺伝子の改変によるゴーシェ病モデルマウス作成の試みが行われた。その結果、胎生致死のもの、無症状のもの、Type1のモデルは作成されたが、いまだ有用な神経型ゴーシェ病のモデルマウスは存在しない。一方、ヒトのサポシンC欠損症は世界で2症例のみであるが、ともにType3のゴーシェ病類似の病型を呈することが知られており、in vitroでもサポシンCはGCaseに必須の活性化たんぱく質であることが明らかになっている。これらの事実から、我々は、サポシンCの特異的ノックアウトマウスは生化学的、病理学的に神経型ゴーシェ病のモデル動物となると予想し、サポシンCの特異的ノックアウトマウスの作成を試みた。マウスのスフィンゴ脂質活性化タンパク質(プロサポシン)遺伝子のサポシンC領域に、特定の遺伝子変異(5番目のシステインをセリンに置換)を導入するターゲティングベクターを構築し、組換えES細胞を経て、サポシンC変異ヘテロマウスの作成に成功した。F1ヘテロマウスは現時点で生後3ヶ月となるが、特に症状は認められていない。今後はF1ヘテロマウスの交配によりサポシンCノックアウトマウスを作成し、それが神経型ゴーシェ病の表現型を呈するか否か検討を進める予定である。
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