研究概要 |
ゴーシェ病(GD)はライソゾーム酵素であるacid-β-glucosidase(GCase)の欠損を病因とするライソゾーム病で、3つの臨床病型:Type 1(慢性非神経型),Type2(急性神経型)、Type3(亜急性神経型)に分類される。日本では神経症状を呈する病型の頻度が高いのが特徴である。Type 1に対しては、近年、酵素補充療法が画期的な治療効果をあげているが、神経症状を主要症状とするType 2、Type 3には酵素補充療法は十分な治療効果が得られず、新たな治療戦略の開拓が急務である。本研究では、GDの神経病態の解明を目的に、GCaseの生体内での必須の活性化たんぱく質であるサポシンCをノックアウトすることにより、神経型GDの疾患モデルマウスの作成を試みた。マウスのスフィンゴ脂質活性化タンパク質(プロサポシン)遺伝子のサポシンC領域に、遺伝子変異(5番目のシステインをセリンに置換)を導入するターゲティングベクターを構築し、サポシンCノックアウトマウス(Sap-C-/-)を得た。Sap-C-/-は肝臓の脂質分析でHFA-glucosylceramideの有意な蓄積を認めたが、正常に出生、発育し、生後3ヶ月までの観察では明瞭な神経症状を呈さないことが明らかになった。ヒトのサポシンC欠損症は遅発型の神経症状を呈することから、今後はより長期の観察を行うとともに、詳細な神経病理学的解析を進める予定である。
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