研究課題
基盤研究(C)
視床下部弓状核(ARC)に発現するガラニン様ペプチド(GALP)、ニューロペプチドY(NPY)及び、プロオピオメラノコルチン(POMC)に焦点をあて、生後発達過程における遺伝子の生理的変動をIn situハイブリダイゼーション法にて検討した。生後の栄養状態や、特に長期間に及ぶ高脂肪食摂取が食欲調節機構に影響を与えることが報告されている。本研究では発達過程での食餌の変化が及ぼす影響を明らかにするため、離乳前の時期での母乳制限の影響や妊娠後期および授乳中の母親ラットへの高脂肪負荷が仔ラットの遺伝子発現に与える影響をIn situハイブリダイゼーション法で検討した。またレプチン投与の影響も検討した。GALP遺伝子の発現は出生後8日目で初めて認められ、15日目と40日目の間に著明に増加した。NPYとPOMC遺伝子は、出生当日から認められた。24時間の母乳制限ではGALP遺伝子の発現に有意な変化は見られなかった。これに対しNPYとPOMC遺伝子は有意に変化した。母親ラットへの高脂肪負荷によって仔ラットのGALP mRNA発現は、離乳期に有意に増加していた。NPYとPOMCは変化しなかった。また新生児期のレプチン投与でGALP、NPYとPOMC mRNA発現は変化しなかった。今回の検討で母ラットに対する長期間の高脂肪食負荷によって、仔ラットのGALP遺伝子は一過性ではあるが、離乳期の発現量に差が生じることが明らかになった。GALPシステムが変化は、胎児期、生後早期からの高脂肪食負荷がその他の脳内摂食調節系にも影響している可能性を示唆する。小児において肥満やメタボリックシンドロームが急速に増加している背景には、生後の過食は最も重要な因子であるが、胎児期あるいは新生児期の栄養状態が、摂食調節機構の発達に何らかの影響を与える可能性も考えられる。
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