研究課題
基盤研究(C)
重症乳児ミオクロニーてんかん(SMEI)は電位依存性ナトリウムチャネルαサブユニット1型遺伝子SCN1Aの変異により引き起こされる。先頃我々が報告したSCN1AノックアウトSMEIモデルマウス(Ogiwara et al., J Neurosci 22:5903-5914,2007)では、重篤なてんかん発作を示し、ホモ欠失マウスは約2週間で死亡する。このマウスでは分断された蛋白の発現は確認されず、このことから症状は分断された蛋白のdominant-negativeな(有害な)効果によるものではなく、haploinsufficiency、すなわち正常蛋白の量が半分になることが症状の発現に繋がっていることが示唆された。また、大脳皮質のスライス培養標本において抑制性介在ニューロンのナトリウム電流が大きく低下していること、電流低下は興奮性ニューロンでは見られないことなどを見いだしている。更には、Nav1.1がパルブアルブミン陽性抑制性神経細胞の軸索(起始部および遠位部)に多く発現し、興奮性細胞ではほとんど見られないことを明らかにした。このマウスではB6系統をバックグラウンドとするものと129をバックグラウンドとするものの間で症状の重篤度に差が見られ、症状を修飾する因子(遺伝子)の存在が示唆された。本課題において我々は、国立遺伝学研究所の城石俊彦教授より譲り受けたMSMマウスと、SMEIマウスモデルを掛け合わせ、F1へテロマウスの死亡率に顕著な差を見いだした(雄で死亡率が高い)。このことにより、X染色体上に修飾因子の存在が示唆された。更に世代を重ね、また並行して城石俊彦教授らにより開発されたコンソミックマウス(1種の染色体のみ別系統由来)を用いることにより、X染色体上修飾因子の存在領域の絞り込みに成功した。
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