小児期発症神経変性疾患の神経変性に酸化ストレスが関与していることを明らかにするために、ELISA法による生体試料(尿、血液、髄液)中の酸化ストレスマーカー測定と剖検脳を用いた神経病理学的解析を行った。本年度は、進行性ミオクローヌスてんかんの病因として重要な歯状核赤核ルイ体萎縮症(DRPLA)において検討を行い、研究成果を論文発表した(J.Neurol.Sci)。DRPLAでは剖検脳の大脳基底核において核酸の酸化的障害産物8-hydroxy-2'-deoxyguanosine(8-OHdG)、脂質の酸化的障害産物4-hydroxy nonenal(4-HNE)が沈着し、抗酸化酵素CU/ZnSODの表出低下を認めた。これらの所見から、DRPLAの神経変性に酸化ストレスが関与していることが示唆された。 さらに、重症心身障害児(者)の肝脂肪変性・線維化に酸化ストレスが関与している可能性を病理組織材料を用いて明らかにした(脳と発達印刷中)。肝脂肪変性を伴った症例では、脂質に対する酸化ストレスマーカー4-HNEの沈着が肝細胞で認められた。以上の所見から、重症心身障害児(者)の肝線維化の病態に対する脂質過酸化の関与が考えられた。 また、有熱時けいれん重積・群発の患者髄液を用いて、酸化ストレスマーカーを測定し、結果を第49回日本小児神経学会総会にて発表した(2007年7月)。けいれん群発の回数と髄液8-OHdGの上昇が相関していたことから、酸化ストレスが海馬硬化に関与している可能性が示唆された。さらに髄液酸化ストレスマーカー解析はさらに症例数を増やし、有熱時けいれん重積群ではコントロール群に比べて8-OHdGが有意に上昇していることを示した(2007年10月The 3rd Congress of Asian Society for Pediatric Researchにて発表)。
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