研究概要 |
シェーグレン症候群(SS)の病態を明らかにするために,より発症に近い若年発症患者の唾液のプロテオーム解により,病因・病態に関わるタンパクを同定することを目的とする。(1)唾液サンプルの適正な処理方法につき検討し,プロテアーゼインヒビターの添加の必要性について,tricine-PAGEで検討したところ,プロテアーゼインヒビターの有無はバンドの数に影響しなかった。また,サンプルの前処理法として,アセトン沈殿,エタノール沈殿,TCA沈殿,フィルター処理,無処理のサンプルをアガロースニ次元電気泳動で評価した。その結果,より多くのタンパクを同定するためには無処理がよいということが明らかとなった。(2)患者の病態解析には基礎データとなる唾液分泌量の若年者の基準値が必要であるが,そのようなデータはこれまでに本邦ではなかった。そこで基準値の設定のために131名の健康中学生の唾液を採取し,分泌量を測定した。SSの診断基準に採用されている3つの採取方法において,学年別,男女別で大きな差は認められなかった。この結果を用いて10代前半の患者の唾液分泌量の評価の基準を定めることができた。(3)5名の健康成人の唾液サンプルーをプールしてアガロースニ次元電気泳動法で解析し,唾液に含まれるタンパク質として35種類を同定した。(4)BRUKER DALTONICS社のCLINPROT[○!R]システム(MALDI-TOF/TOF-MSおよびサンプル,調製ロボット)を用いたプロテオーム解析では,健康中学生とSS患者群においてピーク強度に有意差のあるタンパクが複数認められた。これらのアミノ酸配列をタンデムMS解析することにより一部は唾液に含まれる抗菌タンパクに由来するペプチドであった。今後は,中学生のサンプル,SS患者のサンプルをアガロース電気泳動法で解析し,成人と中学生の差,健康中学生とSS患者との差を解析していく予定である。
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