原発性免疫不全症の臨床例の解析において、我々は、遺伝子変真の復帰(reversion)を認めた白血球接着異常症l型(LAD-1)の乳児例を世界で初めて発見し報告した(Blood2007)。LAD-1は、白血球上のβ2インテグリン(CD18)。の欠損による原発性免疫不全症で、重症細菌感染症、白血球異常増多、臍帯脱落遅延、創傷治癒遅延を特徴とする。患児は、CD18遺伝子に新規の、2つの変異をもつ複合ヘテロ接合体であり、CD18が欠損していたが、リンパ球のごく一部にCD18陽性細胞が認められた。同細胞は、CD3陽性CD8陽性のT細胞で、T細胞レセプターVβ22を有するシングルクローンであった。患児への母体血の混入は否定され、父親由来のスプライス変異が消失していたことより、患児の1つのCD8陽性T細胞においてreversionが起きたと考えられた。本研究により原発性免疫不全症における新たなreversion例が見出され、また、reversionはprogenitorレベルだけではなくある程度成然した細胞でも起こり得ること、CD18陽性T細胞はCD18陰性T細胞比対して増殖優位性を有すること、reversion症例では必ずしも臨床症状の改善や修飾がみられないことなど、種々の重要な知見を得ることができた。一方、in vitroの実験として計画しているWiskott-Aldrich症候群(WAS)をモデルとしたreversionの誘導実験に関しては、現在、WAS蛋白と薬剤耐性遺伝子であるNeoRの融合遺伝子を発現するベクターを構築中である。融合遺伝子はクローニングが終了し、発現ベクターに組み込む段階にあり、今後の進展が期待される。
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