研究概要 |
IgA欠損症は比較的頻度の多い先天性免疫不全症であるが、その病態は明らかでない。近年、IgA欠損症の病因としてTACI(calcium-modulator and cytophilin ligand interactor)遺伝子異常が報告された。そこで、IgA欠損の病態を明らかにするため、TACIを含めたTNF-αファミリーの発現、遺伝子解析をおこない、さらに、IgA1,IgA2サブクラスの遺伝子、タンパク発現の検討をおこなった。その結果、低IgA血症患者のなかに、本邦2例目のIgA1遺伝子欠損症を同定した。 選択的IgA欠損症、低IgA血症患者の末梢血単核球より、genomic DNA, RNAを抽出し、PCRまたはRT-PCR法にて各遺伝子を増幅した。一部の遺伝子はreal-time PCRにて半定量解析をおこなった。血漿中または末梢血単核球をサイトカインで刺激した培養上清中のAPRIL, BAFFタンパクまたはIgA, IgA1、IgA2をELISA法にて測定した。 選択的IgA欠損症、低IgA血症ともにTACI, BAFF-R, APRIL, BAFF-Rの遺伝子に病因となる変異は存在しなかった。血漿APRIL、BAFFタンパクはコントロールと比較し増加していた。1例のIgA欠損症を除きコントロール、IgA欠損症ともに末梢血単核球のIgA1の発現はIgA2より高値であった。この1例のIgA1定常部遺伝子を調べたところIgA1を含む大きな免疫グロブリン定常部領域の遺伝子欠損が認められた。 低IgA血症の病因の一つとして、IgA定常部領域の遺伝子欠損を考慮する必要がある。また、IgA欠損症の血漿中のAPRIL, BAFFの高値は単球細胞の活性化がその原因として示唆された。
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