研究概要 |
本研究の目的は,小児喘息発症に強く関連していると考えられている乳幼児期のウイルス感染誘発性喘鳴に,(1)抗原暴露,受動喫煙,揮発性化学物質等の環境因子がいかに複合的に関与しているか(2)症状の発現に重要な役割をはたしているメディエーター,ロイコトリエン(LT)の代謝系,その受容体にいかなる影響を与えているのか,(3)吸入ステロイド,LT拮抗薬などの薬剤で早期介入を行なうことにより喘息発症を予防できる可能性があるか否かを,明らかにし,急激に増加している小児喘息の発症予防につながる基礎的知見を蓄積することである.予備的実験として,我々は,ケモカイン.サイトカインを産生し,アレルギー性炎症に関与する細胞として,ヒトの気道上皮細胞(BEAS2B,16HBE, NBE)を培養系を確立し,Th2サイトカインとロイコトリエンとのクロストークを解明すべく研究をおこなった.その結果これらの気道上皮細胞にはcysLTsの受容体(cysLTR1,cysLTR2),およびLTB4の受容体(BLT)が発現していることを見いだした.これは,cysLTs, LTB4の多彩な生理活性を示唆するものである.さらにこれらの受容体発現はTh2サイトカインにより発現が誘導されることを見出した.同時に,ケモカインであるエオタキシン3の発現もTh2サイトカインIL-4により強く誘導されるのみならず,感染に関与したサイトカインINFγによっても増幅されることを見出した.これらの分子は更にLTD4を加えることにより発現が増強し,気道の好酸球性炎症,喘鳴の発現にウイルス感染およびcysLTsが強く関与していることを示すものである
|