研究概要 |
これまで、糸球体係蹄壁の蛋白透過を防ぐメインバリアは、糸球体基底膜と考えられてきた。しかし近年、糸球体上皮細胞がバリアとして重要な働きをしていることを示唆する多くの報告がされている。糸球体上皮細胞は高度に分化した細胞で、足突起を有する。足突起と足突起の間にはスリット膜と呼ばれる細胞間接着装置が存在し、アルブミンなどの血清蛋白の透過を防ぐバリアとして重要な働きをしていると考えられている。 本研究では、小児特発性ネフローゼ症候群患者を対象に、最近発見された糸球体上皮細胞足突起間のスリット膜関連分子遺伝子の解析を行い、小児特発性ネフローゼ症候群における蛋白尿発症メカニズムを明らかすることを目的とする。 18年度は以下のことを実施した。 1.患者検体・臨床データの収集 対象患者:発症時1歳から15歳の小児特発性ネフローゼ症候群患者で、腎生検で微小糸球体変化または巣状分節性糸球体硬化症を示す症例を対象とする。 検体収集:約100例の患者の末梢白血球からゲノムDNAを抽出した。 2.腎病理学的検討 腎生検組織の光顕、蛍光、電顕所見から微小糸球体変化または巣状分節性糸球体硬化症の病理診断を確定した。 3.遺伝子変異の解析 ゲノムDNAを使用し、podocin遺伝子(NPHS2)の全エクソンをプライマーを用いてサーマルサイクラーによるPCR法により増幅し,ABI310シークエンサーにより塩基配列を確認し,変異の検出を開始した。
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