研究概要 |
著者らはカンナビノイド受容体作動薬は、カプサイシンやタバコ煙などの非特異的刺激による気道炎症を抑制することを報告した。そこで、今回は、カンナビノイド受容体作動薬のモルモットを用いたアレルギー性気道炎症に対する抑制効果を検討した。次に、従来の抗気道炎症薬であるDSCG、ステロイド薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、Th2サイトカイン阻害薬との抗炎症効果との差異を検討する予定である。 平成18年度において、カンナビノイド受容体作動薬は、合成カンナビノイドアゴニストWIN 55212-2を用いてモルモット気道アレルギー性炎症に対する抑制効果を検討した。 喘息モデルモルモット、すなわちオブアルブミン(0VA)感作モルモットに、OVA抗原チャレンジによリアレルギー性気道炎症を惹起させた。この場合の気道炎症評価は、エバンスブルーの色素を用いて気管および気管支の組織へ漏出したエバンスブルー量を測定する血漿漏出反応をみる方法で検討した。 その結果、カンナビノイドアゴニストWIN 55212-2(0.1mg/kg iv)は、感作モルモットに対するOVA抗原吸入後の気管および気管支の炎症に対し、両者とも有意な抑制効果を示した。特に、WIN 55212-2は、タキキニンの分解酵素であるニュートラルエンドペプチデース阻害薬であるホスフォラミドンで増強させたアレルギー性気道炎症に対し著名な抑制効果を示した。 平成19年度は、カンナビノイドアゴニストWIN 55212-2(0.1,0.01,0.01mg/kg iv)は、感作モルモットに対するOVA抗原吸入後の気管および気管支の炎症に対し、両者ともdose-dependenntに有意な抑制効果を示した。さらに、このWIN 55212-2(0.1mg/kg iv)による炎症抑制は、カンナビノイドB2受容体アンタゴニストSR144528の前処置投与により阻害された。この成績から、WIN 55212-2はカンナビノイドB2受容体を介する機序でアレルギー性気道炎症を抑制していることが証明された。 以上の成績から、抗原刺激により持続する気道炎症が起こり、ニュートラルエンドペプチデースの多い気道上皮の剥離が生じることで、さらに非特異的刺激や抗原刺激による神経原性炎症が増強する。カンナビノイド受容体作動薬は、これら一連の気道炎症を抑制することが示唆された。そこで、WIN 55212-2は気管支喘息をはじめとする気道炎症性疾患に対する新しい抗気道炎症薬としての応用が期待される。
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