研究課題/領域番号 |
18591203
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
大塚 宜一 順天堂大学, 医学部, 講師 (90338335)
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研究分担者 |
清水 俊明 順天堂大学, 医学部, 助教授 (30260889)
永田 智 順天堂大学, 医学部, 講師 (70266055)
藤井 徹 順天堂大学, 医学部, 助手 (30420855)
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キーワード | n-3系多価不飽和脂肪酸 / 新生児壊死性腸炎 / NF-κB / IκB-a / β / PPAR-γ / DHA / EPA / microarray |
研究概要 |
n-3系多価不飽和脂肪酸(n-3PUFA)は、関節リウマチや炎症性腸疾患などの慢性炎症性疾患の予防や治療にも利用されるようになっているが、その新生児期における役割や分子生物学的な検討は十分にはなされていない。平成18年度は、n-3PUFAの抗炎症効果を検討する目的で、胎児ラットを用いた新生児壊死性腸炎(NEC)のモデルを作成し、n-3PUFAの消化管粘膜に与える影響を中心に検討した。 n-3PUFAの検討:NECモデルは、在胎20日(21日が満期)に帝王切開にて出生させた仔ラットを用いた。出生直後に0.15mlのミルクを胃に注入したところ、生後24時間後に肉眼的な消化管出血を約50%に確認した。これらの炎症性変化を認めた腸管では、NF-κB関連因子のIκB-a/β-mRNAおよび抗炎症性因子のPPAR-γ-mRNAの発現が増強していた。 次に、n-3PUFAの効果を検討する目的で、妊娠7〜20日の母ラットに大豆(コントロール)、DHA、EPAをそれぞれ付加した餌を与え、出生した仔ラットの消化管粘膜の変化を検証した。その結果、DHAおよびEPA群でNEC発症の頻度が抑えられ、抗炎症性分子であるPPAR-γの発現がさらに増強していた。 また、出生直後の各群の仔ラット小腸粘膜における炎症関連分子の遺伝子発現をmicroarrayを用いて総合的に解析した。その結果、n-3PUFA投与により炎症性分子であるIκB-a/βの発現が減弱する一方、アポトーシスと関連のあるcaspase1,caspase12,granzyme Bなどの発現の増強を認めた。すなわちn-3PUFAは、非炎症時にはIκB-a/βの発現を減弱させる一方、炎症細胞にアポトーシスを誘導することで、また、炎症が生じた際にはPPAR-γなどの抗炎症性分子の発現を促し、未熟児ラット小腸粘膜を炎症性変化から保護している可能性が示唆された。 以上の検討から、n-3PUFAを用いることで、生体内の細胞は特定のシグナル伝達分子の発現を調節し免疫応答を変化させていることが証明された。特にn-3PUFAには、抗炎症効果が期待され、小児炎症性腸疾患における免疫応答を制御できる可能性が示唆された。
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