研究概要 |
腎臓の皮質集合管(CCD)は生体の酸塩基平衡に関わっており、主に主細胞と間在細胞(IC)からなっている。間在細胞には、H^+を排泄するαICと,HCO3_3-を分泌するβICがある。一方、一酸化窒素(NO)は様々な組織や臓器において多彩な作用を発揮し、生体内の恒常性維持に重要な働きをしている。NO合成酵素(NOS)には神経型、誘導型、内皮型の3種類が存在する。CCDにはそれぞれのNO合成酵素が存在し重要な働きをしている。しかし、CCDでの酸塩基平衡におけるNOの関わりについては解明されていない。そこで本硬究では、まず、CCDにおいてNOがアシドーシス環境、及びアルカリ環境の変化で産生されるか否かを調べた。マウスの腎臓からCCDを単離し培養した。細胞でNOが産生されると発色するDAF蛍光色素を取り込ませ、培養液を先の環境に変化させ検討した。アシドーシス環境に変化させるとNOが産生されることは確認できた。しかし、アルカリ環境では確認できなかった。次に、単離したCCDを上記と同様に蛍光色素を使い蛍光レイシオイメージングシステムでリアルタイムに観察、計測した。アシドーシス環境下の培養液に変更すると、直後からNO産生が示唆される所見が得られた。一方、上記と同様に、アルカリ環境では確認できなかった。また、リアルタイムの計測では、NO産生はある細胞から産生され伝播するような所見を得た。産生した細胞がCCDのどの細胞かを同定するために、培養実験直後に同じ集合管を用いαIC,βIC,主細胞それぞれに特異的な抗体AEI,PNA,AQ2で2重染色を行なった。NO産生がどの細胞か同定を試みたが確定できなかった。 次にNOのCCDでの働きを明確にするため、NOSそれぞれが単独欠損しているノックアウトマウスと3種類とも欠損しているトリプルノックアウトマウスを使った。トリプルNOマウスは生後3ケ月以降に尿崩症に陥り、その原因の一つにCCDにアポトーシスなど組織変化が生じることが分かっていた。実験ではアポトーシス前のCCDが比較検討に不可欠で、出生早期のCCDを単離する必要があることが判明した。今後は出生早期のCCDで試みる必要がある。
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