研究概要 |
ウイルス感染は、気管支喘息(喘息)の増悪および発症に関与している。今年度我々は、小児喘息発作の原因ウイルスを同定し、喘息の病態に重要と考えられている好酸球の活性化およびサイトカイン産生を検討した。平成15年10月より平成18年9月までの期間、群馬県立小児医療センター外来受診および入院したのべ576名(男児370名、女児206名、平均年齢3.97歳)の喘息児のうち発作時がのべ225名、発作なしがのべ351名であった。発作時225名のうち、ウイルス学的検索をし得た157名中、ライノウイルスが46名、RSウイルスが43名、エンテロウイルスが18名、その他のウイルス(ライノ,RS,エンテロ,パラインフルエンザの中での2つのウイルスによる重複感染およびインフルエンザA, Bを含む)が18名で、検出されなかったものが32名であった。発作の数では、9月から12月に多く認め、ライノウイルスでは比較的通年性に認めたが、RSウイルスは、11月に最も多く認め、エンテロウイルスは、9,10月に集中して認められた。また、喘息発作時、非発作時に末梢血中好酸球数、血清中の好酸球由来組織傷害性蛋白の1つであるEosinophil cationic protein (ECP)、血清中の17種類のサイトカインまたはケモカインを検討したところ、非発作時に比べ、発作時でECPおよびIL-5,IL-6,IL-8,IL-10がそれぞれ統計学的に有意に上昇していた。各ウイルス陽性の発作群と非発作群の比較では、RS群以外で、IL-5が有意に上昇していた。また、各ウイルスによる発作群間の比較検討では、唯一IL-5において、ライノ群、エンテロ群、その他のウイルス群でRS群に比べて有意に高値を示した。以上より、ウイルス感染とくにライノウイルスによる喘息発作時の病態には、好酸球の活性化が関与している可能性が考えられた。
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