研究課題
基盤研究(C)
1999年から開始された小児急性骨髄性白血病共同治療研究(AML99)の付随研究の一環として、予後に関与する遺伝子変異の検索を行っている。特にFLT3遺伝子のinternal tandem duplication (ITD)が予後不良因子であること、KIT遺伝子変異がt(8;21)-AMLの予後不良因子であることをこれまで明かとしてきた。Nucleophosmin (NPM)遺伝子変異は、成人正常核型のAMLにおいて50-60%と高頻度にみられ、むしろ予後良好とされている。今回我々は小児正常核型33例について同遺伝子変異の検索を行ったが、変異例はみられなかった。海外の報告でも小児の鵬伝子変異例はまれであり、年齢や人種による違いがあるものと考えられた。次にt(8;21)-AMLのKIT遺伝子変異についてさらに症例数を増やして解析を行つたところ(計88例)新たにtransmembrane領域に変異(I538V, V540L)がみられ、特に後者は治療開始から4ヶ月で再発が見られた。全体では17例(19.3%)に変異がみられ、特にD816変異が6例、N822変異が5例でみられた。日本の成人と中国からもN822変異例の報告がかなりの率でみられるにもかかわらず、ヨーロッパ諸国(オランダ、フランス、イタリア)からの報告はなく、人種による差が存在するものと考えられた。また従来から知られているRAS遺伝子についても全158例で変異の検索を行ったところ、NRAS変異は11例(7.0%)、KRAS変異は15例(9.5%)に見られたが、予後との相関は認めなかった。最近の海外の報告からも予後との関連は乏しいものと考えられた。なおRAS遺伝子変異は、小児の骨髄異形性症候群である若年性骨髄単球性白血病(JMML)の原因遺伝子の一つとされており、通常JMMLは予後不良であるが、KRASのcodon13変異の3例は比較的良好な経過をたどっており、注目される。
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