研究概要 |
これまで小児急性骨髄性白血病(AML)158検体より、FLT3、KIT、PDGFR等の膜型チロシンキナーゼ(RTK)遺伝子異常の解析を行なった。近年、正常核型のAMLでWT1遺伝子変異が強力な予後因子となることが成人領域で報告された。WT1遺伝子は、小児の腎腫瘍であるWilms腫瘍の原因遺伝子の1つとして単離され、癌抑制遺伝子と考えられている。WT1遺伝子はジンクフィンガー型の転写因子をコードしている。今年度はWT1遺伝子の変異の検討を行ない、これまでの遺伝子異常の解析結果(FLT3,MLL,KIT,NPM,RASなど)とAML99研究の臨床データを組み合わせて検討した。 AML臨床検体におけるWT1変異の頻度は、解析可能であったAML臨床検体138例中変異を認めた症例は計8例(exon7 5例、exon8 1例、exon9 2例)で、exon7,exon8,exon9のいずれかにalternative splicingによる欠失を認めた症例は計23例(exon7 10例、exon8 1例、exon9 9例、exon7とexon9 2例、exon8とexon9 1例)であった。WT1遺伝子の変異に関して、臨床検体のcDNAのみの解析では、解析対象領域にalternative splicingによるexonの欠失を認める症例が多く、正確な変異の頻度は検索できなかったが、解析しえた範囲では、WT1遺伝子変異を有する症例では有さない症例と比べ、KIT変異を有する割合が有意に高かった。また、WT1遺伝子変異を認める症例では、寛解導入率、無病生存率、全生存率が低い傾向がみられた。今後小児AMLの多数例でのDNAを用いた解析が必要である。cDNAの解析でみられた、alternative splicingの意義は不明であり、今後正常検体との比較が必要であると思われた。
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