Epstein-Barrウイルス(EBV)核抗原1(EBNA1)はすべてのEBV感染細胞に発現する唯一の潜伏感染抗原であるが、その分子構造により、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の標的にならないというのが定説であった。しかし、2004年にEBNA1 mRNAから発現する不完全な合成蛋白質が細胞内で分解、CTL抗原決定基(エピトープ)が生成されることが報告され、EBNA1が細胞性免疫応答の標的として再評価された。私共は、in vitro転写法を用いて作成したEBNA1 mRNAを樹状細胞に導入し、この細胞を用いて健常EBV既感染者の末梢血CD8陽性Tリンパ球を刺激し、EBNA1蛋白を発現する標的細胞を認識するCTLを効率よく誘導することに成功し、ヒト白血球抗原(HLA)-B^*3501およびHLA-Cw^*0303拘束性のEBNA1特異的CTLクローンを分離した。このうち、前者は既知のエピトープを認識していたが、後者は新規のエピトープを認識していた。HLA-Cw^*0303に提示されるエピトープに特徴的なアミノ酸配列の予測情報を基にしてペプチドを合成し、実験的にエピトープを同定した。このエピトープはHLA-Cw^*0304によっても提示され、日本人の約40%をカバーすることになるため、免疫応答解析への応用が期待された。そこで、この新規エピトープおよび既知のHLA-B^*3501拘束性のエピトープを用いて、MHC-テトラマーを作製し、末梢血中の特異的CTLの頻度を測定することが可能になった。リンパ球・ペプチド混合培養法を用いて特異的CTLを刺激・増幅させた後、既感染健常者におけるCTL頻度を測定したが、健常既感染者において1x10^<-5>から1x10^<-4>程度と、従来考えられていたよりも頻度が高いことが示唆された。こうした解析はEBV関連疾患の解析に有用と考えられた。
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